相場の膠着感は確かに際立っている。
シカゴ・オプション取引所が（略）算出する変動性指数（ＶＩＸ）は、足元で１１程度まで低下した。９０に迫ったリーマン・ショック直後と比べるのは無理があるとしても、過去最低に近い「異常」水準であることは間違いない。

株価は正直だ。ゴールドマン株は昨年末から１０％下げ、シティ株は９％、ＪＰモルガン・チェース株も５％それぞれ下落した。
高値安定の株価は投資家にすればリスクの小さい相場環境といえるものの、市場では金融機関の収益にはマイナスとの見方が強まっている。

ただ膠着相場がいつまで続くのか疑問符がつかないわけでもない。
過去と比べても低い水準でのＶＩＸの長期化は、膠着相場に安住して危機意識が薄れた市場のムードの表れとも読める。先達の経験則では、それは危うい兆候だ。

強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、陶酔の中で消えていく――。
２００８年に亡くなった著名投資家のジョン・テンプルトン氏による有名な相場格言だ。
楽観が広がりすぎるのは相場上昇を続けるうえで必ずしも好ましいことではないかもしれない。
　年鑑「ストック・トレーダーズ・アルマナック」によると、６月のダウ平均は下落する傾向がある。
１９５０年からの平均収益率は０・３％のマイナスと、１年で９月に次いで成績が悪い月だ。週明けからは６月相場。市場のムードは変わるだろうか。
（ＮＱＮニューヨーク＝増永裕樹）